タリン
今回、北欧4カ国を回ったが、予定にない国を一つ追加した。バルト三国の一つ、エストニアの首都タリンへの日帰りの旅である。タリンとは、バルト海を隔ててはいるが、ヘルシンキからは目と鼻の先で、ホバークラフトで3時間あれば着く。ヘルシンキからのエクスカーションとしてはもってこいの場所であり、ヘルシンキ市内でも多くの旅行会社がタリンへのツアーを企画し、ビザも簡単に取得できるようになっている。もっとも、日本人の場合ビザの取得は免除されている。ドイツ等、EUの国の国民でもビザが必要な場合があるのに、面白い制度だ。
船は殺風景な波止場に着く。小さな待合場所があるだけで、にぎやかなヘルシンキの港とは対照的だ。いきなり行くことを決めたこともあり、エストニアおよびタリンについての情報は全く無い。とりあえず、街の中心とおぼしき方向へ歩き出す。タリンの風情は、これまでの北欧の国々とはうってかわって、独特の雰囲気がある。中世の面影を色濃く残す街であり、当時の姿そのままの城門や石畳の道がある。これに加えて、他に旧共産圏の国に行ったことはないのだが、共産圏についてもっていたイメージを裏打ちするような、どことなくさびれた感じがあり、中世ヨーロッパと共産圏の入り混じったなんともいえない情緒がある。
実際に街の中心に着いてみると、西欧に近づきつつある発展の姿がうかがえる。ATMからはシティバンクカードで現地通貨を引き出すことができ、それまで一文無し状態だったのでほっとする。もっとも、北欧の国々に比べればやはり英語の普及度はまだ低いようだが。ツーリスト・インフォメーションや市庁舎の展示からうかがえるのは、つい最近独立を勝ち取った国の誇りと未来への希望である。後にロンドンのLSEで会ったエストニアからの留学生も、エストニアがバルト三国でも先頭を切って復興しつつあり、EUにも近い位置にいることを熱っぽく語っていたが、それをなるほどと思わせる人々の若々しさが、古い情緒の残る街並みの中に息づいているように感じた。