ベルゲンから夜行でオスロに戻り、そこからさらに夜行でデンマークの首都、コペンハーゲンへ。北欧4カ国の首都の間はそれぞれ夜行一本分くらいであり、効率的に旅をするには夜行を多用することになる。夜行でホテル代を浮かせ、その分、ホテルに泊まる時はそれなりに良いホテルを使うことで、メリハリの利いた旅になる。

デンマークには古城が多い。そのうちの一つが、エルシノアー(Helsingor)のクロンボー城(Kronborg Slot)、ハムレットの舞台だ。エルシノアーはコペンハーゲンから列車で1時間弱の港街で、駅を降りるとすぐに、岬に立つ城の姿が見える。重厚な城門など、見所はあるが、ハムレットの情景を思い浮かべるほどに雰囲気のある城ではなかった。やはり、無機質な港沿いにあるのがよろしくない。ところで、エルシノアーの対岸はもうスウェーデンで、5kmしか離れていない。そのため、フェリーを使って山ほど酒を買っている人が目立つ。北欧は福祉国家で税金が高いことで有名だが、酒についてもかなりの税がかけられているらしく、いわば「免税船」を使って買い込んでいるわけだ。EU内での免税店が廃止されれば、こうした免税船も無くなるのだろうか。

次に訪れたのが、フレデリクスボー城(Frederiksborg Slot)だ。こちらは、クロンボー城とはうって変わって、森と湖に囲まれた抜群のロケーションにある。水面に映る城の姿がこの上もなく優美である。城門や城壁も、水を張った堀としっくり溶け合っている。

城の外観だけでなく、中も素晴らしい。特にチャペルの天井の豪勢な装飾には目を見張る。調度品にしても、巨大な陶器のデコレーションなど、贅を尽くしており、城や宮殿に慣れきった目にも見応えがあった。そして、城巡りの楽しみの大きなものはその庭園であるが、こちらも、さながらフランスのヴェルサイユを思わせる小さな森の散策を楽しむことができる。ヨーロッパで数々の城を回ったが、その中でもこの城は総合的に見て最も評価の高い一つだ。

コペンハーゲンの市内も見所は多い。中でも最も有名なのは、人魚の像であろう。この人魚像は、「世界三大がっかり」の一つと言われる。他の二つは、ベルギーの小便小僧と、シンガポールのマーライオン像だ。自分はこの二つは既に見ているので、これで三大がっかりすべてを制覇することになる。小便小僧が「がっかり」と言われるのは、とても小さいからだが、まあそれはある程度予想できる。こういう像があまり大きくても困る。マーライオンも、予想以上に小さいといわれる。がっかりするという噂を承知の上で、シンガポールに行き、遠くにマーライオン像が見えたとき、確かにまあ大したことはないなと理解した。さて、実際にその場に行ってみると、実は遠くから見えていた像は複製で、そのすぐ近くにある、人の身長にも満たないぱっとしない像が本物だと初めて分かる。世界三大がっかりという話で相当に覚悟していたにもかかわらず、本当にがっかりさせてくれるのは大したものだ。さて、例の人魚像は、やや小ぶりではあるが、まあそんなに予想を裏切るものではない。問題は、背景に無粋な港のクレーンなどが見えてしまうことだろう。像自体はせっかく美しいのだから、もう少しロマンティックな場所に置いてほしいものだ。

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