一路北へ、ベルファストへと向かう。ベルファストは、一般に北アイルランドと呼ばれる、イギリス領の地域の首都である。北アイルランドは、1949年に現在のアイルランド、すなわちアイルランド共和国がイギリスから独立した際にイギリス領に残った部分であるが、この地域の去就が北アイルランド問題と呼ばれイギリスとアイルランドの最大の政治的課題であり続けていることはよく知られている。この旅行の少し前にも、ベルファストで爆弾事件があったところであり、旅行を控える人もいる。
しかし、ベルファストに降り立って見ると、そうした事件の痕跡は全く無い。あまりにも整然とした街並みに、かえって拍子抜けするほどだ。しかし、ただ一つ、それらしき(?)ものを見つけることができた。市の中心の広場に面した衣料品店のショーウィンドウに、「Bomb damege, closing sale」と書かれている。もし冗談だとしたら、相当なブラック・ユーモアだ。
さらに北上する。目指すは、北の果ての海岸にある、特異な自然景観、ジャイアンツ・コーズウェイ(Giant's Causeway)だ。そのための基点として、海辺の街、ポートラッシュ(Portrush)に宿をとる。こじんまりとしたリゾート地で、安くて小奇麗なB&Bが立ち並んでいる。ジャイアンツ・コーズウェイに行くのは翌日に回すこととして、街の近くにあるもう一つの見所、ダンルース城(Dunluce Castle)に向かう。ダンルース城は、16世紀に地方の領主により建てられた城で、現在は廃墟となっている。断崖絶壁に面しており、かつて城の一部が崩落して海に落ちたという恐ろしいエピソードも記されている。その日はよく晴れていたこともあり、抜けるように蒼い海をバックにした古城の姿は感動的なものであった。


ポートラッシュの街に戻り、夕食を取る。海辺に来たらやはり魚介類が良い。海に面したパブレストランに入り、シーフード・プラッターを注文する。各種の魚のフライに加え、エビやムール貝も盛られており、本当に満腹になった。腹ごしらえをした後は、少し辺りを散歩する。北アイルランドの夏は、日が長い。夕食を終えた後でようやく夕刻の雰囲気になる。海を見下ろせる小高い丘から、沈む夕日を眺める。あたりには、散歩する老人や、同じく夕日を見つめる若いカップルがいる。何も無い田舎街だが、こうした場所があればデートスポットには十分なのかもしれない。


続く